最高行政裁判所判字第237号判決
2014/05/15 IP 判決上訴人一 HUGO BOSS Trade Mark Management GmbH & Co. KG
上訴人二 経済部知的財産局
被上訴人 中保寶貝城株式会社
主文:
原判決を取り消し、知的財産裁判所に差し戻す。
事実:
1.被上訴人の係争商標(文字及び図)は2007年5月24日に第30類の「ティーバッグ、ココア飲料、アイスクリーム、飴」などを指定商品として上訴人二に登録出願し、2008年1月1日に登録番号第1295843号として登録された。
2.上訴人一は係争商標が当時の商標法第23条第1項第14号に該当したことで、無効審判を請求した。
3.知的財産局における審査期間に商標法は改正され、2012年7月1日に施行された。
4.上訴人二は係争商標が旧商標法第23条第1項第12号前半及び現行商標法第30条第1項第11号前半に該当したものであるから、2012年11月15日に中日台異字号第1000259号商標無効審判決定書にて登録を取り消すべき処分を下した。
5.被上訴人は不服で経済部に訴願を提起したが、棄却され、さらに知的財産裁判所に行政訴訟を提起した。原判決は訴願決定及び原処分を取り消し、それに対し上訴人一は不服で本件上訴を提起した。
判決の旨:
1.他人の著名な商標又は標章と同一又は類似するもので、関連公衆が混同誤認するおそれがあるものは商標登録を受けることができないことは商標法の規定に明文化されている。
2.商標法が著名商標に与える保護は、一般商標より周到で有効であるから、適用するとき慎重にしなければならない。商標が著名になれば著名になるほど、たとえ商品や役務の類似性が低くても、関連公衆が誤認混同するおそれは生じやすい。このため、当該規定に該当するかにつき判断するには、まず引用商標は著名商標であるか否かを判断したうえ、関連公衆が混同誤認するおそれの有無を判断すべきである。ところが、原判決では、混同誤認の可能性を判断する前に、著名商標の節について判断せずに、直接混同誤認の可能性を判断したから、法の適用は妥当であるとは言い難い。
3.次に、係争商標は関連公衆に混同誤認させるおそれがあるか否かを判断するとき、商標の識別性、類似性、商品又は役務の類似性及びその各判断要素の程度、並びに先権利者が経営多角化の状態、関連公衆が各商標に熟知する程度などで総合的判断をしなければならない。
4.二商標の外観は相違するが、観念と称呼は類似し、時と場所を異にする離隔的観察及び称呼によれば、係争商標は関連公衆に引用商標が提供する児童商品に関するシリーズ商標と連想させ、商品の出所について混同させるおそれがあるといえる。
5.原判決においては、引用商標が強烈な識別性を持ちながら、上訴人一は既に経営多角化になったと認め、引用商標は係争商標より関連消費者に熟知されているとした。ただし、原判決では「実際にその経営多角化が既にジュース、コーヒー、パン、ケーキ、お茶などの食品や飲料商品に広げている」という上訴人一の主張を参酌せずに、本件商標と引用商標と混同誤認するおそれがないと判断したことは不適切であるから、本件は原審裁判所に差し戻すべきものである。