2019年上半期の知的財産権趨勢
2019/07/31 IP 統計2019年上半期における特許、実用新案、意匠の三種の専利の新規出願件数は、35,534件(前年同期比1%増 )となり、そのうち意匠は1割増と比較的大きな成長となった。商標登録出願件数は41,986件で前年同期比並みとなった。台湾人による特許出願件数は2%増と小幅な成長となり、外国人による意匠出願件数は3割の大幅増と顕著な成長ぶりを見せた。特許出願人のうち、台積電(TSMC)及びアリババは、それぞれ台湾法人、外国法人の1位となった。
一、 今期の専利出願の動向
(一) 意匠出願件数が顕著な成長
三種類の専利出願件数は35,534件(前年同期比微増)で、その内訳は、特許が22,775件(前年同期比1%増)、意匠が4,259件(前年同期比10%増)とそれぞれプラス成長した。また、実用新案は8,500件(前年同期比5%減)でマイナスに転じた(表1参照)。
(二) 外国人による意匠出願件数は3割増
台湾人による三種類の専利出願件数を見てみると、特許は8,563件(前年同期比2%増)と小幅な成長となったが、実用新案(7,978件)及び意匠(1,960件)はマイナスに転じた(表1参照)。外国人においては、特許(14,212件)及び意匠(2,299件)の出願件数はプラス成長であったが、実用新案(522件)はマイナスに転じた(表1参照)。外国人による意匠出願件数が30%成長した原因は、フランスの出願件数が激増したことのほか、日本及び米国等のその他の主要国にプラス成長がみられたことにある(図3参照)。
(三) 台積電が台湾法人による特許出願件数のトップ
台湾法人全体における特許出願件数は小幅に成長した。そのうち、台積電(TSMC:429件)が最も多く、次いで友達光電(AUO:318件)、聯發科(Media Tek:163件)であった。台積電及び友達光電の出願件数は前年同期比それぞれ24%、30%と大幅成長となった(図4参照)。この他、台湾の中小企業における特許出願件数はここ3年で継続的に成長しており、2019年上半期の成長率は16%に達し、これは専利運用により研究開発成果を保護するという観念を中小企業が徐々に重視してきていることを示している。
(四) 清華大学の特許出願件数は台湾における高等教育機関のトップ
台湾の高等教育機関における特許出願件数は減少し、国公立大学、私立大学のいずれもが減少した。出願人別でみると、国立清華大学が44件とトップを占め、その件数は前年同期比13%増となった。私立大学では、亜東技術学院及び長庚大学のいずれもが18件の最多となった(表4参照)。この他、国公立大学と私立大学の出願件数はそれぞれ381件、319件で、出願件数の割合はそれぞれ54%、46%となり(図5参照)、前年同期で比較すると私立大学が上昇した。
(五) 工業技術研究院の特許出願件数は他の研究機関をリード
台湾の研究機関全体の特許出願件数は小幅な減少で、ランキング1位の工業技術研究院(ITRI)は81件となり、2位の中央研究院(22件)等その他の研究機関を大きく引き離した(表6参照)。
(六) アリババは特許、ルノーは意匠出願に積極的
外国人による特許出願件数を国籍別にみると、日本が6,707件と最も多く(図3参照)、米国(3,047件)等その他の国(地域)を遥かにリードした。成長率においては、日本(前年同期比+5%)、香港(前年同期比+56%)といずれもプラス成長となり、ポートフォリオ展開において積極的であったことがうかがえる。法人別出願件数をみると、香港アリババが408件と最も多く前年同期比92%増と大幅成長した(図4参照)。智慧財産局の洪淑敏•局長は、電子商取引の新形態が持続的に変化するに伴い、アリババは近年台湾におけるポートフォリオに相当積極的で、また台湾のインターネット普及、スマートフォン所有率がいずれも7割を超えていることから、電子商取引の発展には相当適した環境であると述べた。
意匠出願においては、日本が704件と最も多く、意匠出願の上位5か国(地域)においては、ドイツを除くいずれもがプラス成長となり、フランスは400%増と顕著な成長を見せ、出願人別ではフランスのルノーの出願件数が102件と最も多かった。洪局長によると、台湾は自動車の部品製造業者が強く、アフターマーケットの海外輸出が多いことから、ルノーの台湾における意匠出願は、それら台湾業者の海外輸出へのけん制目的があるものと思われ、また、台湾での市場に返り咲くためのポートフォリオ展開のためであると見られる。
二、 今期の商標出願の動向
(一) 商標登録出願件数は横ばい
2019年上半期における商標登録出願件数は41,986件で前年同期比ほぼ横ばいとなった。台湾人による出願件数は29,957件(前年同期比0.2%増)となった(表1参照)。外国人による出願件数は12,029件で、主に米国及び香港等の出願件数の減少が影響し、件数においては2%減となった(表1、図3参照)。
(二) 外国人による出願件数は中国が最多
外国人出願人を国籍別にみると、中国が2,958件(前年同期比8%増)と最も多く、次いで日本の2,249件、米国の1,828件であった(図3参照)。台湾における出願件数上位5カ国(地域)のうち、アジアの国(地域)が4つを占め、その出願件数合計は依然として小幅な成長となった。
2019年第1四半期季報は、下記リンク先の智慧局サイトの「統計季報」を参http://www.tipo.gov.tw/lp.asp?ctNode=6801&CtUnit=3308&BaseDSD=7&mp=1
※本文章は『台湾知的財産権ニュース』から転載されたものです。その詳細は下記リンクによりご参照ください。
http://www.chizai.tw/magazine.php?PHPSESSID=d6d7cfceca281eda2e3f18ef46660238