中国企業の「今治」商標登録阻止へ 市側が対策協議会
2021/01/15 中国「今治」の商標登録をめざす中国企業の動きに、愛媛県今治市側が危機感を強めている。登録を阻止して、タオルなどに代表される今治ブランドを守るため、行政や経済団体が対策協議会を設立。市を中心に異議申し立てをすることや政府間交渉で根本的な解決を図ることを確認した。
中国で商標登録や特許権を扱う「国家知識産権局」のウェブサイトで、「今治」の商標申請の状況を調べると、多数の検索結果が並ぶ。「今治 KINJI CUPCAFE」「今治西川」など「今治」を頭につけた名前の中に、「今治」単独の申請が5件あった。
「『今治西川』は同じ名称を今治の企業が使うことはまずない。問題はこの『今治』単独の申請です」。今治市商工振興課の職員が話す。
中国広東省汕頭(スワトウ)市の企業が昨年7月に「動物性の食品、加工食品」「アルコールを含有しない飲料、ビール」「広告、事業の管理、小売・卸売」など5分野で「今治」を商標申請していたことが判明。そのうち4分野が、12月13日から3カ月以内に異議申し立てがない場合、商標登録される「初期査定公告」の手続きに入った。登録されると、取り消しには司法手続きが必要になるという。
中国では2009年と17年にも、「今治」が商標登録申請された。それぞれ別の上海企業が「タオル類」の分野などで申請したが、どちらも今治市と今治タオル工業組合の異議申し立てが認められ、登録には至らなかった。
ただ今回はタオルや縫製業だけでなく、食品や小売りなど幅広い分野に影響が及びかねない。危機感を抱いた今治市は、今治商工会議所、今治地域地場産業振興センター、今治タオル工業組合とともに「海外不正商標出願対策協議会」を設立した。
今月6日に市役所であった初会合で、菅良二市長は「今治ブランドを守れるよう全力を尽くす」と強調。中国当局に「今治は中国で知られた著名な外国地名」と主張し、異議申し立てをすることで一致した。日本の特許庁にも、「今治」が商標登録されないよう政府間交渉で働きかけるよう、すでに要請したという。
市商工振興課の中内大介課長は「今治ブランドの構築の取り組みが結実し、海外での知名度が高まったことが背景にある。それにただ乗りする行為は許さないという強い姿勢で臨みたい」と話した。
※本文章は『産経新聞』から転載されたものです。