音楽教室の著作権料、生徒は徴収対象外 最高裁が初判断
2022/10/24 日本音楽教室のレッスンでの楽曲演奏が、日本音楽著作権協会(JASRAC)による著作権使用料の徴収対象になるかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(深山卓也裁判長)は24日、JASRAC側の上告を棄却した。教師の演奏に対する著作権使用料の徴収を認める一方、生徒の演奏は徴収対象にならないとした二審・知財高裁判決が確定した。
音楽教室の著作権使用料について最高裁が判断を示したのは初めて。
JASRACは2017年、教師と生徒の演奏がともに著作権使用料の徴収対象になることを前提に、音楽教室から年間受講料収入の最大2.5%を徴収する方針を表明。21年3月時点で全国6782教室が対象となり、著作権使用料は3億5000万~10億円程度に上るとしていた。
JASRACと音楽教室側は最高裁判決後、それぞれ記者会見し、徴収対象と確定した教師分の著作権使用料について金額などの協議を始める考えを示した。
教師の演奏が徴収対象になることは、これまでに事実上確定していた。上告審では、生徒の演奏を「音楽教室による楽曲利用」とみなし、教室側に著作権使用料を求めることができるかが最大の争点だった。
第1小法廷はまず、楽曲の利用主体を判断する基準を整理。考慮すべき具体的な要素として演奏の目的と態様、(事業者の)演奏への関与の内容と程度――といった事情を踏まえるのが相当とした。その上で、音楽教室での生徒の演奏について検討した。
判決は、生徒の演奏は「教師から技術の教授を受けて習得し、その向上を図ることが目的で、楽曲の演奏はその手段にすぎない」とした。
JASRAC側は音楽教室側の強い管理支配の下で演奏していると主張していたが、「生徒は任意かつ自主的に演奏しており、強制されていない」と指摘。演奏の主体は生徒自身で、音楽教室から使用料を取ることはできないと結論づけた。裁判官5人の全員一致による結論。
訴訟は著作権使用料を求められたヤマハ音楽振興会など全国約250の事業者が17年、JASRACに徴収権がないことの確認を求めて起こした。
20年2月の一審・東京地裁判決はJASRAC側の主張に沿い、教師と生徒の双方の演奏を使用料の徴収対象と認めた。一方、21年3月の二審・知財高裁判決は教師の演奏は徴収対象としつつ、「生徒は自らの演奏技術向上のために自主的に演奏している」とし、生徒の演奏に徴収権は及ばないとの判断を示していた。
※本文章は『日本経済新聞』から転載されたものです。