先進光電が久禾光電を提訴 求償1億台湾元
2022/04/19 台湾光学レンズ産業で再び特許争いが起きている。世界のノートパソコン用レンズ最大手の先進光電科技(AOET、以下「先進光電」と略す)は18日、ノートパソコン用レンズメーカー第3位の久禾光電(PTIC)及び同社の王世岳・董事長に対し権利侵害で訴訟を提起した。先進光電は久禾光電が生産・販売した薄型ノートパソコン用の3枚式及び4枚式光学レンズの各シリーズの商品が、先進光電が所有する特許権を侵害しているとし、求償額は少なくとも1億台湾元(約4.39億円)になると主張した。
大立光電(LARGAN)が先進光電を相手に営業秘密侵害及びノートパソコン用レンズの権利侵害等で訴訟を提起し、8年ものあいだ裁判沙汰となっていたが、昨年3月双方和解となり、大立光電は先進光電の私募案への参加を通じて15.2%の株式を取得し、単一法人での筆頭株主となった。大立光電が株主になった後、先進光電は特許権争いのリーダーへ転換し、久禾光電を提訴したことから、外界では、先進光電は大立光電の黙認のもと提訴し、「世界のノートパソコン用レンズ最大手」として、業界3位の久禾光電に権利侵害訴訟を起こし大立光電の特許争いの延長戦とみなすことができると解釈している。
先進光電と久禾光電はいずれもノートパソコン用レンズのサプライヤーで、先進光電は市場の7割以上を占め、世界のノートパソコン用レンズの最大手である。久禾光電は現在興櫃(エマージング)登録会社で、今年上場申請する予定であるが、当該権利侵害案は久禾光電の上場計画に支障をもたらし、後続の資金調達等の作業スケジュールを滞らせる恐れがある。
先進光電の提訴に対し、久禾光電の鄭錫勳・総経理は、「相手方が訴訟提起前に先に発表した」ことは意外であり、不意を突かれ、現在はまだ資料を受け取っていないため正式にコメントすることはできず、弁護士と討論後、本日対外説明を行うと示した。上場計画に支障が出る恐れについて、鄭錫勳・総経理は、訴訟はビジネス戦略であり、各業界にいずれもあることで、理にかなっているならば、「我々はポジティブに対応していく」と述べた。
先進光電の高維亜・董事長は、久禾光電の権利侵害は事実であり、先進光電は何度も久禾光電に注意を促し誠意を尽くし対話のルートを示したが、相手側からは正式な回答はなく、求償1億台湾元はただの手始めで、今後その他の権利侵害の事実があれば、求償範囲を更に拡大することも辞さないと示した。
また高維亜・董事長は、先進光電と大立光電は和解し、関連の特許権利侵害についてはすでに大立光電が実施許諾を取得済みであるが、今回久禾光電に対して権利侵害の提訴を行ったのは、久禾光電が先進光電の特許を侵害したからであり、大立光電とは関係がなく、「だれもが特許で費やしたコストを必要としている」と直言した。
先進光電と大立光電は昨年3月に和解をしたが、先進光電は2020年の年末に賠償金及びライセンス料10.92億台湾元(約47.98億円)を提示したところ、毎年の1株当たりの純損益は8.9台湾元(約39円)にまで達した。新型コロナの影響でノートパソコンの需要の恩恵を受け、先進光電の昨年通年の営業収入は36.68億台湾元(約161億円)、前年比16.05%増と過去最高を記録したが、先進光電の粗利益は「20%台」を維持できず、EPSは0.03台湾元(約0.13円)となんとか損益のバランスを取ったのに比べ、久禾光電の昨年の最終利益は1.43億台湾元(約6.28億円)で史上最高となり、前年比26.5%増、EPSは4.25台湾元(約18.66円)となった。
※本文章は『台湾知的財産権情報サイト』から転載されたものです。