知的財産裁判所102年度民商訴字第49号民事判決
2014/10/08 IP 判決~販売代理関係が終了後、商標権の消尽を主張可能か~
原告 安鵬科技股份有限公司
被告 迪光数位科技股份有限公司(原名:迪光数位顕微鏡股份有限公司)
日盛光検測股份有限公司
主文:
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実:
1.原告は第9類の「コンピュータソフトウェア……デジタルビデオカメラ、顕微鏡、望遠鏡」などを指定した登録番号第01241181号(以下係争商標という)「Dino Lite Digital Microscope」の商標権者である。
2.被告の迪化会社は原告の販売代理店であって、2012年7月1日まで原告のために係争商標が付されたデジタル顕微鏡商品(以下係争商品という)を宣伝した。
3.原告と被告の販売代理関係が終わった後、被告は原告の同意を得ずに係争商標の文字を迪化会社の英語社名「Dino-LiteInc.」及びサイトのURL「www.dino-lite.biz」(以下係争サイトという)として使用し続けた。また、被告は係争サイトのホームページの真中に明らかに係争商標を拡大して商標として使用し、一般大衆に係争サイトは原告や原告の合法販売代理店のサイトだと誤認させていたため、原告は商標法第68条第1項第3号に違反したことで、被告がその商標権を侵害したと主張した。
判決の旨:
1.商標法第68条には、商標権者が他人の使用を排除する範囲、即ち排他的範囲が規定されている。商標の排他的範囲は主に商標の商品・役務の出所表示機能が破壊されることを防ぎ、関連消費者に混同誤認させないように確保するものである。
2.商標法第36条第2項は商標権の「権利消尽原則」又は「初回販売理論」とも呼ばれる。つまり、商標権者や受諾者は市場で初めてその商標が付された商品を販売・流通するとき既に利得を得て、その商標が付された商品に関しメーカーから小売業者、消費者への転売過程には商標の使用許諾への黙認が既に存在しているから、商標権は商品の最初販売時に消尽するとされる。その商品が再び市場に流通すると、原則的に商標権者はその商標権を主張することができない。また、台湾商標法には国際消尽原則が採用され、商標権者はその同意を得て市場に流通した商品に対し、最初の販売市場が国内か国外かを問わず、権利を主張することができない。この為、真正商品の並行輸入は禁止されず、「真正商品の並行輸入の正当性」は明文で承認されている。したがって、その商標が付された商品は商標権者や受諾者により市場に流通されると、商標専用権は消尽し、その商品を所持・販売する第三者に対して商標専用権を主張することができない。但し、商品の変質、損傷を防止するため又は他の正当事由がある場合は、この限りでない。
3.調査により、係争サイトで販売されている係争商品は原告がかつて被告に販売の権利を許諾した係争商品である。それに、被告の販売代理契約で購入した商品が未だに在庫があるという事実については原告が認める。したがって、係争商品に付された係争商標は明らかに原告が合法で付したものである。前記の説明を踏まえると、原告は係争商標が付された係争商品に対して、商標権を主張できないことはいうまでもない。さらに、係争サイトで係争商品の傍らに係争商標が表示されている節について、原告の提出した係争サイトによると、被告は係争商品の傍らに係争商標を拡大して再び表示したが、これはただ係争商品のプロモーションをする手法であり、係争商標の使用範囲に属するといえても、被告が原告の製造した係争商品を販売するために係争商標を使用する行為は、商標による商品・役務の出所表示機能を破壊することがなく、消費者に混同誤認させる恐れもない。以上により、本件被告の行為は商標法第68条に該当せず、商標権の侵害とは認められない。