3Dプリンター技術の発展でEUが家具デザインに「著作権」を適用、保護期間が100年近くまで延長へ
2016/08/09 国際家具のデザインは「意匠権」によって保護されており、イギリスでは25年間で意匠権による保護期間が終了し、パブリックドメインに移行します。イギリスおよびEUは「著作権」の保護範囲を家具のデザインまで拡大することを決定したことから、意匠権が切れてもデザイナーの死後70年間は著作権で保護されることになり、100年近くにわたって家具の複製が禁止されることになりました。
意匠権が切れた家具はパブリックドメインに移行するため、誰でも同じデザインの家具を製造できるようになります。バルセロナチェアやイームズチェアなどの意匠権が切れたデザインチェアは、多くのメーカーからレプリカ品が販売されており、オリジナル品よりも安価に購入可能です。一方で、2016年7月28日にイギリス政府が家具デザインに意匠権ではなく著作権を適用するという法律を制定したことから、意匠権の保護期間である25年間が過ぎても、著作権の保護期間である「制作者の死後70年間」が適用されることになりました。
イームズチェアのデザイナーは1978年に亡くなっているため、すでに意匠権が切れています。新しい法律では、著作権による保護が2048年まで続くことになるため、レプリカの製造ができなくなります。イームズ夫婦が共同でデザインしたものについては、イームズ夫人が1988年に亡くなっているため、著作権保護期間が2058年まで続くことになります。レプリカはオリジナルより安価で販売されることが多いのですが、今後は「オリジナルデザインに高価なコストを強いられるようになる」とThe Guardianは述べています。
なお、オリジナルとレプリカの違いについては、以下のページで詳しく書かれています。
このイギリスの決定にはEUも追随するため、ヨーロッパ全土で意匠権と著作権の扱いが変更されることになります。この変更は単なるレプリカだけでなく3Dプリンターによる複製も禁止されており、3Dプリンター技術の発展を考慮したものとみられています。すでに意匠権が切れたデザイン家具から合法的なレプリカが販売されている場合がありますが、法律が適用されるまでに6カ月間の移行期間が用意されています。移行期間は2017年1月末日で終了するため、レプリカを販売しているメーカーは販売を中止するなどの措置に迫られています。
本文章は『Gigazine』から転載されたものです。