容器の平面図形には識別力がないとして商標登録を拒絶
2023/06/14 国際EU一般裁判所は、菓子容器の図形商標の登録を拒絶したEUIPOの決定を支持し、立体商標の観点を展開させた基準を平面図形の商標にも適用されることを確認した。Valerie Annanが解説する。
欧州商標(EUTM)が欧州連合知的財産庁(EUIPO)に登録されるための要件で、最も重要なものの1つは、EU商標規則(EUTMR)の第7条(1)(b)に規定されている識別力に関するものだ。この規定は、商標に識別力がない場合は登録を拒絶されると定めている。つまり、関連する商品・サービスとして出所を示せず、他人のものと区別することができない場合だ。商標に識別力があるかどうかを判断するには、商標の全体的な印象を見る必要がある。但し、これは商標の個々の要素を考慮に入れるべきでないということを意味するものではない。
図形商標の識別力のある特徴の必要性
2020年、オランダとイタリアに本社を置く菓子メーカーのペルフェティ・ファン・メレは、第30類の様々な商品(菓子、ミント、チョコレート、チューインガム、ケーキ、砂糖、ココア)を指定してEUTM出願を行った。この図形商標は、波打つ輪郭を持つ円筒形の容器の平面図面から構成されている。
ペルフェティ・ファン・メレは、EUIPOが識別力の評価において立体商標の観点を展開させた基準を適用したため、ハードルが高すぎるとして拒絶査定を争った。さらに、ペルフェティ・ファン・メレは、関連する公衆は図形商標を円筒形ではなく平面として認識し、そのような商標は他の菓子市場と比較してユニークであると主張したものの、残念ながら審判部の支持を得られなかった。そして、控訴審がEU一般裁判所に持ち込まれた。
図形商標:形状を登録できるか?
EU一般裁判所は審判部の決定を支持した。そして、平面図形および立体の商標が十分な識別力を持つためには、特定の市場における標準的なものから著しく逸脱している必要があるとの判断を示した。提出された菓子に使われている実装画像を基にすれば、この条件を満たすものではなかった。EU一般裁判所によれば、図形商標が円筒形ではないと解釈できるというペルフェティ・ファン・メレの主張は説得力を欠いたもので、むしろ、出願商標の図形に遠近感がないことから、一般公衆の価値判断の規準では、出願商標を円筒形の容器と認識する理由の方がより多くなるのである。
この判決で、EU一般裁判所は、関連市場の認識が商標出願人の意図する認識と必ずしも一致しないと強調した。したがって、形状商標や図形商標を出願する際には、この点に留意することが必要である。しかしながら、識別力の要件は達成不可能なものではなく、より綿密な調査と創造的な図形の問題ということなのであろう。
※本文章は『Novagraaf』から転載されたものです。