テレビ用チップ戦 リアルテックがメディアテックを米で提訴
2023/06/08 国際ICチップメーカーの瑞昱半導体(リアルテック)が、米国カリフォルニア州北部地区連邦裁判所でライバルである聯発科技(メディアテック)を提訴した。
裁判所の書類によると、リアルテックはメディアテックが業務を妨害し、スマートテレビとセットトップボックス(STB)用チップ市場を独占することをもくろみ、特許訴訟を専門とする知財ブローカーIP Valueと協議の上、「訴訟奨金」を支払う形で、リアルテックに対し特許訴訟を提起したと指摘している。
これに対しメディアテックは、当該事件はすでに司法手続きに入っていることからコメントは控えるとした。リアルテックは不公平な競争であると強調するだけでなく、公共の利益を守る立場を繰り返し、具体的な求償金額は裁判所の裁決にゆだねるとした。
営業規模から見ると、メディアテックとリアルテックはそれぞれ台湾のIC設計の第1位と第3位である。メディアテックの主な製品ラインは、Dimensityシリーズのスマートフォン用チップセットで、リアルテックはPCとネットワーク通信、特にAudio Codec(音声データのエンコード)分野において頭角を現している。
リアルテックは米国連邦裁判所の書類の中で、メディアテックはIPValue Management Inc傘下の子会社であるFuture Link Systems LLCと2019年に特許ライセンスの協議書にサインし、その中には、メディアテックのライバルであるリアルテックに対してFuture Linkが特許訴訟戦をしかけることを推奨する「訴訟奨励金」についての協議事項も含まれていたと指摘。リアルテックはFuture LinkとIPValueも同時に被告として挙げ、両者を「隠れたヘンチマン(hired henchmen)」と称した。
裁判所の書類の中で、メディアテックは世界のテレビ用チップ市場で60%に近いシェアを有しており、メディアテックは特許訴訟を利用してクライアントにリアルテックはテレビ用チップの信頼できないサプライヤーで、市場発展に影響を及ぼす可能性があると暗示し、リアルテックを市場から追い出す意図があったと指摘した。
また、リアルテックは、今回の訴訟提起は当該業務の自由と公平な競争を保護し、大衆がより大きな傷を負わないよう防止するためであるとして、反トラスト法(独占禁止法)での提訴は、市場の選択性を増加し、他のメーカーも競争で産業発展を促進できるようにするためであるとした。
リアルテックは、金銭的損失(金額不明)の賠償と、メディアテックらのこのような行為を終わらせることを要求し、もし賠償金を獲得できれば寄付するとしている。
法人によると、メディアテックは2018年に晨星(morning star)を合併した後、世界のTV用システム・オン・チップ(SoC)の出荷シェアは6割を超えており、テレビブランドメーカーにとって、ビジネス価格協議を維持する手段のため、二番目に大きいサプライヤーである聯詠(ノバテック)、リアルテック等に問い合わせることとなっている。リアルテックはテレビのSoCの売り上げに占める割合は約13%で(2021年の年報)、主力製品ではないものの、訴訟という争いのもと、やはり訴訟費用、弁護士費用等といった一定の損失が生じることとなる。
法人によると、リアルテックの今回の行動は、会社運営について重大な影響があったものではなく、戦で戦を止めるべく、またこれにより交渉の余地があればより多くの市場シェアを獲得したいという希望があるものとみている。
※本文章は『台湾知的財産権情報サイト』から転載されたものです