「直虎」思うように使えず…困惑 複数事業所、既に商標登録
2016/10/16 国際浜松市ゆかりの女性戦国武将・井伊直虎を題材にした大河ドラマ「おんな城主 直虎」の放映開始に向け、市内の事業者らが食品など関連商品の開発に取り組む中、商品名に思うように「直虎」の文字を使用できず、頭を悩ませている。理由は、複数の事業所が既に「直虎」の文字を商標登録しているため。関連商品を通じた地域活性化を狙う浜松商工会議所や浜松市は「今後の商品開発や地域振興に支障が出る」として、特許庁に登録取り消しや説明などを求めている。
直虎関連の商標は13日現在、放映元のNHKエンタープライズのドラマ名やロゴなど13件が登録されている。このほか、浜松市の「直虎・ゆかりの地・浜松」のロゴなど11件が申請済みで、特許庁が審査している。
商標登録の申請はドラマ放映が発表された2015年8月以降に一気に増え、「直虎」や「直虎の里」などの文字も県内外の事業者や個人によって申請・登録された。同商議所によると、「直虎」の商標は菓子や清酒、弁当などほとんどの食品区分で登録されているため、「直虎まんじゅう」や「直虎団子」など、直虎が入った商品名を登録者の許可なく使用することはできないという。
直虎商品の開発を支援する同商議所の担当者は、「ビジネス上の戦略なので仕方ない」と語る一方、「歴史上の人物の名前の商標が独占されるのはおかしい」と訴える。
現在は支援事業所に「直虎」を使わないよう呼び掛けたり、ルールに従ってNHKエンタープライズや浜松市のロゴを使うよう勧めたりしている。弁理士を介して商標権を侵害しない使用法も紹介して対応している。
商標登録を行った県内の事業所は「『直虎』の商標を関係者以外に登録されないよう早めに動いただけ」と説明し、「市や商議所とは見解の違いで、もめるつもりはない。自分の会社を通してもらえれば、使用して構わない」としている。
■取り消し可否 4月ごろ決定
特許庁商標課によると、「直虎」の商標については取り消しを求める異議申し立て中で、審判によって2017年4月ごろに結果が出る見通し。審判は「直虎」の文字によって、誰もが即座に「井伊直虎」という人物を連想できるのか―が焦点になるという。
同庁は09年、地域活性化の妨げにならないよう歴史上人物の商標登録について審査基準を明確化し、全く関係の無い個人や企業が商標を登録できないようにした。ただ、直虎だけでは人物と特定できない上、直虎の文字が入る歴史上の人物は、江戸時代末期の大名堀直虎、明治・大正時代の政治家鍋島直虎などがいるため、当時の登録申請調査の際には「『直虎』が必ずしも歴史上人物の『井伊直虎』につながらない」との判断になったという。
同課の担当者は「商標の登録審査の判断は社会情勢によって変わってくる。今後の審判の結果がどうなるかは分からない」と話している。
本文章は『静岡新聞SBS』から転載されたものです。