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「イソジン」と「カバくん」から見る商標権と著作権

2015/12/18 国際

1.概要

今月上旬、明治が「イソジン」ブランドを用いた殺菌消毒薬の製造販売を終了することを発表した。明治はこれまで「イソジン」の商標権を有する米系製薬会社ムンディファーマ社と技術提携及びライセンス契約を締結し、うがい薬をはじめとする「イソジン」ブランドの殺菌消毒薬を長年にわたって開発・製造・販売してきた。しかし、このムンディファーマ社との提携・契約関係の終了に伴い、明治は「イソジン」ブランドの製造販売権をムンディファーマ社へ移管することに合意し、「イソジン」ブランドを使用できなくなったためだ。明治が「イソジン」ブランドの殺菌消毒薬を販売できるのは、来年3月31日着の納品までとなる。

 

2.「カバくん」の使用

「イソジン」のCMなどでもお馴染みだったイメージキャラクターである「カバくん」の著作権は、明治のグループ会社が有しているため、この「カバくん」は引き続き明治が使用していくこととなる。また、明治は、味や効果等が従来のものと変わらないうがい薬を、その名称(商品名)を「明治うがい薬」と改めることで、今後も販売を継続していく運びだ。つまり、「カバくん」が記載されたパッケージのうがい薬は、商品名を「イソジン」から「明治うがい薬」に変更しただけで、これまで通り製造販売されるということだ。

 

3.著作権

「イソジン」ブランドを用いた殺菌消毒薬は、ムンディファーマ社との間で「イソジン」の日本での独占販売契約を締結した塩野義製薬が販売することになっている。塩野義製薬では、カバをモチーフにしたイメージキャラクターを作る方向で検討しているとのことだ。

 仮に塩野義製薬がカバのイメージキャラクターを作成・使用したとしても、「カバくん」との類似性や依拠性等の検討から著作権侵害と認定されない限り、そのキャラクターを使用することが可能だ。イメージキャラクターにカバを用いるというアイディア自体は著作権法で保護されないからだ。著作権法で保護されるのは、あくまで表現なのである。

 

4.コメント

この件により、「イソジン」の名称を用いた殺菌消毒薬と明治が製造販売する殺菌消毒薬のイメージキャラクターである「カバくん」とが別個に使用されることとなる。ブランド名の使用、すなわち商標権の使用に関するライセンス契約が終了することは、独自に有しているイメージキャラクターに関する著作権の使用に影響しないからだ。

 もっとも、消費者にとっては「イソジン」=「カバくん」のイメージが強く定着していると思われるため、塩野義製薬による「イソジン」ブランドを用いた殺菌消毒薬の販売と明治による「明治うがい薬」の製造販売との双方において、この強く定着したイメージは大きな影響を与えると予想される。もちろん、このイメージの定着は、長年にわたる「カバくん」というイメージキャラクターを用いた宣伝広告により商品の販売を継続してきた明治の販売戦略の賜物ともいえることであるが、その反動は決して小さくはないだろう。

 商品の販売戦略としてイメージキャラクターを用いることは、宣伝効果への期待からその機会が多いと考えられる。今回の明治のように、ブランド名についてはライセンス契約を締結しており、イメージキャラクターの著作権については自社が有しているという企業は、ライセンス契約の終了に伴うブランド名とイメージキャラクターの分離が生じうることを想定し、今回の件を参考事例として、その分離後の動向に注目したい。また、ブランド名のライセンス契約締結を視野に入れている企業は、独自のイメージキャラクターを用いた販売を行うかどうか検討することが求められるだろう。いずれにせよ、「カバくん」を用いた明治による「明治うがい薬」の販売戦略に今後も目は離せない。

 

本文章は『企業法務ナビ』から転載されたものです。

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