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「下町ロケット」で諸刃の剣として描かれた特許侵害の「逆訴訟」 どんな効果がある?

2015/11/21 国際

直木賞作家・池井戸潤さん原作のドラマ「下町ロケット」(TBS系)が、第5話で視聴率20%を超える人気だ。 第5話までの「ロケット編」では、元宇宙科学開発機構の研究員だった主人公(佃航平)が、ロケット打ち上げ失敗の責任を取って退職し、父親の町工場(佃製作所)を継いで、さまざまな困難に立ち向かう姿が描かれている。

 

この物語の中では、知的財産が大きなテーマになった。佃製作所の開発したステラエンジンが特許権を侵害しているとして、大手企業のナカシマ工業から、販売差し止めと90億円の損害賠償を求めて訴えられてしまうのだ。その後、ナカシマ工業は、佃製作所の株式51%を譲り受けることを条件に、和解を持ちかけてきた。

 

このような乗っ取りとも言える措置に対して、佃製作所は、知的財産のエキスパートである神谷弁護士に依頼して、対抗策を練った。それは、逆に、ナカシマ工業の主力エンジン「エルマーII」に対して、特許権侵害で販売差し止めと損害賠償70億円を求めて、別の訴訟を起こすことだった。その結果、裁判所が「佃製作所の主張する特許侵害は、ほぼ全面的に認められる」として、ナカシマ工業が佃製作所に56億円を支払う和解案を双方に提示して、解決に至った。

 

この展開の中では、佃製作所からナカシマ工業への「逆訴訟」が、諸刃の剣の逆転手段として描かれていたが、実際はどのようなものなのだろうか。また、下町ロケットで描かれているような争いは実際にも起きうることなのだろうか。知財問題に詳しい井野邊陽弁護士に聞いた。

 

●勝訴が見込めていたから、有効な手段になった

「ドラマに出てくる『逆訴訟』についてですが、裁判を訴えられた被告の側が、原告に対して訴訟を提起することは有効な反撃手段です」

 

このように井野邊弁護士は切り出した。

 

「ドラマでは、先行の訴訟、逆訴訟ともに、佃製作所側の弁護士が当初から勝訴を見込んでいたので、有効な手段になりました。ただし、逆訴訟の影響で、裁判がより長期化するリスクがあるので、『諸刃の剣』だったのです。

 

ドラマでも、ナカシマ工業は和解勧告後も裁判を継続する意向を示して、兵糧攻めを狙っていましたよね。ですが、中小企業いじめの実態が新聞に掲載され、イメージダウンを恐れた社長の意向で、和解勧告の受諾になりました。

 

こういったエラーがなければ兵糧攻めは功を奏して、佃製作所は倒産もしくは株式譲渡の選択を再び迫られたでしょうね」

 

●訴えられないようにするには「防御」が重要

一般の企業にとっても「逆訴訟」は、訴訟を起こされた場合の有効な手段になるのか。

 

「ドラマのように『逆訴訟』を起こせる別の技術があれば良いのですが、通常はそれが無い場合が多いでしょう。訴えられた後の対抗策としては、資金力がなければ、係属中の訴訟で特許の無効を主張する程度になります」

 

では、訴訟を起こされないためにはどうすればいいのだろうか。

 

「ドラマ中で弁護士が『取得なさった特許がよくなかった』と指摘していましたが、これは権利性の広い特許を取るべきだったという意味です。この指摘は当を得ているのですが、広い特許は攻撃的である一方で、防御に弱い(特許無効になりやすい)という面もあるのです。

 

訴えられないようにするためには、防御が重要ですので、実際に佃製作所が製造販売しているステラエンジンそのものの特許(権利性は狭いが防御に強い)を出願すべきでした。ただし、この場合、技術が公開されるので、出願したくないという佃製作所の事情があったのかもしれないですね」

 

井野邊弁護士はこのように話していた。

 

本文章は『弁護士ドットコムニュース』から転載されたものです。

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