【生かせ!知財ビジネス】日本の地名 海外で商標出願相次ぐ
2017/02/10 国際わが国の地名が海外で商標出願され続けている。出願人の多くは海外の企業や個人らだ。自治体はこれらの出願を放置し続けていて本当に大丈夫なのか。
「商品内容と地名の持つイメージがかけ離れている場合が多い。日本ではインバウンド戦略で海外顧客の呼び込みを進めているが、地域や産品のイメージを壊され、将来泣き寝入りしないためにも地域で適切な権利化措置をしておくべきだ」と各自治体へ問題提起するのは、発明推進協会市場開発チームの幡野政樹課長だ。
例えば中国の国家工商行政管理総局商標局のデータベースを47都道府県の日本名、中国簡体字、ヘボン式ローマ字で簡易検索すると1400件ヒットする。うち明らかに日本からの出願と思われるのは114件、約8%にとどまり、自治体と関連機関が出願したのは山形、東京、新潟、岐阜、鳥取、島根、愛媛、長崎の8都県、43件にすぎない。使われる商品内容は多様で、「神奈川」は釣り具、医薬、IT関連などの他に避妊具などで使われている。なお中国では初歩登録査定公告後3カ月間に異議申し立てがなければ登録は完了する。
「一般に、日本の地名を使って海外で商品化されても日本の産品やサービスと識別されることはない。日本への憧れがあるからやっていること。日本企業も同じことをやっている」と言うのは国際問題に詳しい日本人弁理士だ。実際、周知性のある地名で登録により誤認の恐れがある場合はどの国でも登録できない。特許庁も登録に不適切な名称は「定期的にリストを作成して各国審査庁へ提供している」(幹部)という。
だが現実は各国で登録されている。一度権利化されると各国での取り消しには多くの時間と費用がかかる。地名には産業、文化などの歴史的蓄積があり、独自の無形資産を形成している。経済的価値があるからこそ観光客誘致や地域産品販促のため、日本各地から世界へ情報発信しているのである。各国内で著名でなくとも、発信される情報量は膨大で世界中の人々が見ている。
ところで「PPAP」が、さまざまな商標を出願しまくっている日本企業、ベストライセンスの出願で話題になった。だが中国企業の泉州市核新文化伝播はその直後、中国で出願していた。グローバル時代はまさに生き馬の目を抜く時代だ。(知財情報&戦略システム 中岡浩)
本文章は『SANKEIBIZ』から転載されたものです。