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地理的表示で米とEUが火花

2017/09/04 国際

日・EU経済連携協定の舞台裏

 

 大枠合意した日本と欧州連合(EU)の経済連携協定交渉で、隠れた争点となったのが地理的表示(GI)保護制度だ。

 

 GIとは、たとえば、フランスのボルドーワインやイタリアのゴルゴンゾーラチーズのように、品質や評価に特徴があるものについて、ボルドー以外で生産されたワインをボルドーと書かせない、一種の知的所有権の保護制度だ。

 

 GIは元々欧州が本場。日本でも2014年6月からGI法に基づいた制度が始まった。お互い立ち位置に違いはないが、欧州主導の強いGI保護に懸念を持つ米国などからの横やりが、問題を複雑にする。

 

 農水省は大枠合意でEUから農産品71品目のGI保護リストを受け取り、7月11日に同省のウェブサイトで品目の詳細な情報を公示した。「3カ月間の意見書提出期間を設け内外から広く意見を募集する目的」(農水省知的財産課)。その後、専門家の意見を求め、農水省が品目ごとにGI保護の可否を判断することになる。早ければ年内に決まる見通しだ。

 

 公示された品目はフランス、イタリア、スペインなど南欧州の産品が中心。チーズやハム、果実など欧州を代表するような高級食品がずらりと並ぶ。EUはEPAでGI保護を優先課題に挙げて日本との交渉に臨んだ。

 

 公示に素早く反応したのが米政府だ。翌12日には米農務省海外農務局が東京発でレポートを発表した。タイトルは「EU提案のGI品目で公示意見募集期間が始まる」。10月9日までに農水省に意見提出する方法を手取り足取り解説している。

 

 「関心のある米国関係者は、期間中にコメントや懸念を表明し適正な配慮を求めるべきだ」と同レポートは強調。日本政府のGI保護品目に対し積極的な意見提出を呼び掛けた。

 

 米国が神経をとがらせるのは、EUのGI保護政策が各国に浸透すれば、米国産の輸出に打撃になる可能性があるからだ。米国の食品、農産物の多くは、欧州移民の子孫が生産している。米国の酪農団体によると、米国産チーズで欧州にちなんだ名前を付けている製品は210億ドルに達するという。

 

 普通名称としてGI保護の対象にならないゴーダやカマンベールなどの商品を除き、数多くの高級チーズがEU内ではGI制度で守られている。「いったんGI保護されると、他産地は同じ名前を名乗れない。そのルールを世界に広げられては困るというのが米国などの新大陸産地の言い分だ」と高橋悌二東京大学非常勤講師は解説する。

 

 そこで米政府や農業団体は日本に対して圧力を掛け、できるだけGI保護を少なく抑え込もうとしている。

 

 公示品目で焦点となりそうなのが「パルミジャーノ・レッジャーノ」チーズだ。イタリアの一地方で生産される特別な高級品だが、翻訳名は「パルメザン」。日本では米国産や日本国産の同名粉チーズが広く普及している。GI保護が認められれば、「パルメザン」の名前は使えなくなる。発売元の米企業などは、今回の保護指定に反発しており、保護指定は難しいとの見方もある。

 

 農水省は今回公示された71品目の中から、内外の批判が強い数品目を外す運びとみられる。EU側は、強い米国の圧力にさらされる日本の立場に理解を示し、多少の妥協には応じる構えとみられる。

 

 品質の優れた地域特産品を保護する。GIの理念はシンプルだが、水面下では米国とEUの思惑が交錯する。日本政府がどのくらい米国に配慮するのか、見ものである。

 

山田 優 (農業ジャーナリスト)

 

本文章は『YAHOOニュース』から転載されたものです。

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