ギョーザにキムチ、「チバニアン」相次ぐ商標出願
2017/09/17 国際約77万年前に地球のN極とS極が最後に逆転した痕跡が確認できる千葉県市原市の地層について、日本の研究チームが国際学会に申請した地質時代の名称「チバニアン」。46億年と言われる地球の歴史に千葉の名が刻まれる可能性があるが、研究と関係のない第三者が自分の商標として出願する例が相次いでいる。
ラテン語で「千葉時代」を意味するチバニアン。国立極地研究所(東京)を中心に千葉大学も加わる研究チームは6月7日、市原市田淵の地層について、地質の年代の境界を代表する国際標準模式地として国際学会に申請した。認められれば、その時代の名前をつけることができ、約77万~12万6千年前の時代がチバニアンと呼ばれるようになる。
ところが、申請に向けた動きが注目を集めるようになる中、「チバニアン」がすでに商標登録されていることがわかった。特許情報プラットフォームによると、昨年8月25日付で市川市内の男性名で出願され、今年3月3日付で登録。商品区分はキーホルダーや文房具類、印刷物、おもちゃなどだった。
極地研などは6月の申請発表時の記者会見で、同月1日付で特許庁に異議を申し立てたことを明らかにした。商品区分のうち「印刷物」について、「チバニアンの啓発のために出版物などを作製する際、問題となる可能性がある」と懸念を示して除外を求めた。
ログイン前の続きしかし6月2日には、同じ市川市内の男性名でギョーザや清涼飲料なども商標出願されていた。また同月9日には、市原市内の飲食店が「チバニアンキムチ」の名称でキムチを商標出願。いずれも現在、審査待ちの状態だ。
さらに6月17日、「CHIBANIAN」が商標出願された。呼称は「チバニアン」で、商品区分の内訳は、電気通信機械器具▽紙類、印刷物▽広告▽預金の受け入れ▽建設工事▽鉄道による輸送▽電子出版物の提供▽自動車――など100以上と多岐にわたる。出願人は大阪府の会社、ベストライセンス。代表の元弁理士、上田育弘氏は「リニア中央新幹線」「民進党」などを商標として大量出願した人物だ。
商標は、先に出願した人の権利が認められる「早い者勝ち」が原則。研究関係者の一人は「チバニアンという名称を第三者が創造し得たとは思えない。国際学会の認定を見越して先手を打とうとする動きなのではないか」と推察する。
このほか、今年1月には千葉市内の男性名で「チバニあん」が商標出願された。商品区分は菓子やパンなどだ。昨年4月には、市原市内の土産物店から「千葉時代」の文言を含む商標も出願されている。
こうした動きに対し、県文化財課の担当者は「研究チームが申請していることなので、県としての対応は何とも」と歯切れが悪い。一方、市原市は、無料の広報紙などでチバニアンと記載しても問題ないとして異議申し立てを見送った。ただ、ある市職員は「市内の業者が土産品を売るときに名称が使えない可能性がある」と困惑している。
■保存・活用両立、検討委設置へ
市原市田淵の「地磁気逆転地層」について、市は、保存と研究活用の両立に向けた新たなルール作りに乗り出す。市の付属機関として専門家などでつくる委員会を近く設置する。
市は来年1月にも、地層一帯を国の天然記念物として申請する方針。指定されれば文化財保護法のもとで保護されるようになるが、研究グループなどによる土の採取といった調査活動ができなくなる恐れもある。
このため市は、学識経験者など6人以内で構成する「市地磁気逆転地層保存活用検討委員会」を設置し、年内にも今後の取り組み方針をまとめたい考えだ。市ふるさと文化課は「天然記念物は保護・保存が前提だが、『チバニアン』として学術的な研究活用も見込まれるため、ルールを検討していきたい」としている。(石平道典)
本文章は『朝日新聞』から転載されたものです。