クアルコム、台湾独禁当局と和解
2018/08/10 台湾台湾の公平交易委員会(公正取引委員会に相当)は10日、米半導体大手クアルコムと、独占禁止法違反を巡る訴訟での和解で合意したと発表した。台湾側は当初、234億台湾ドル(約840億円)とした課徴金を大幅に減額。見返りとしてクアルコムは通信向け半導体の研究開発拠点の建設など、台湾で7億ドル(約770億円)規模の投資を行うと約束したという。
投資の見返りに企業への行政処分を軽減するのは台湾でも珍しい。10日に台北市内で記者会見した洪財隆委員は「台湾の次世代高速通信規格『5G』産業の発展につながる和解だ」と強調。クアルコム側も「相互に有益な決断を下した」と歓迎する声明を出した。
同委員会は17年10月にクアルコムに対する課徴金処分を発表。スマートフォン(スマホ)向けの通信技術のライセンス付与を巡って顧客に排他的な契約を結ばせ、公正な競争を阻害したなどと指摘した。クアルコムはこれを認めず処分の取り消し訴訟を台湾で起こし、係争が続いていた。
台湾側は今回、課徴金を総額の約9分の1に当たる27億3千万台湾ドルに減額。代わりにクアルコムは今後5年間にわたり台湾で7億ドル規模の投資を実施。製品の開発や設計などを担う拠点を新設することに加え、大学との連携などを通じて台湾の産業育成に貢献するという。クアルコムは声明で「(係争による)不確実性が解消され、台湾の無線通信産業の発展を支援できる」とした。
クアルコムはスマホの情報通信に必要な重要特許を握り、半導体と特許を同時に売り込む手法でスマホ向け半導体世界トップに成長した。ただ「優先的地位の乱用」との反発も招き、韓国や欧州連合(EU)の独禁当局と係争が続いている。
本文章は『日本経済新聞』から転載されたものです。