同じ成分の薬なら別製法でも特許侵害 最高裁判決
2015/06/06 国際特許登録された薬と同じ成分の薬を異なる方法でつくった場合、特許侵害に当たるかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は5日、「構造や特性が同じなら、製法が異なっても特許侵害に当たる」とする初判断を示した。物の特許が例外的に製法を含めて認められるのは「構造や特性で特定するのが不可能などの事情が存在するとき」に限定した。
特許は原則として発明した物で取得するが、化学物質やバイオテクノロジーなどの分野は物の構造による特定が難しく、製法を記載した特許出願が認められている。最高裁判決を受け、今後は特許庁がこうした出願を厳しく審査することになりそうだ。出願者は「製法の記載が必要」との主張立証が求められるなど特許の実務に影響が広がる可能性がある。
最高裁は、製法が異なれば特許侵害に当たらないとした二審・知財高裁判決を破棄し、審理を知財高裁に差し戻した。重大事件を扱う知財高裁の裁判官5人による大合議判決を最高裁が取り消したのは初めて。
問題となったのは高脂血症の治療薬。日本で特許登録したハンガリーの医薬品メーカー「テバ」が、同じ成分の薬を製造する協和発酵キリン(東京)や輸入する東理(同)に特許権を侵害されたとして販売差し止めなどを求めた。差し戻し審では、最高裁が判示した例外的ケースに当たるかが審理される。
判決は4人の裁判官の全員一致。山本庸幸裁判官(行政官出身)は「結論は多数意見に賛成だが、理由は特許実務の運用を根底から覆すもので賛成できない」とする意見を付けた。
テバ側は「製法が記載されていても物の特許である以上、成分が同じなら特許侵害」と主張。国内2社側は「別の製法でより純度の高い同じ物質をつくっても特許侵害とされれば制度の趣旨に反する」と反論していた。
テバの代理人弁護士は「我々の主張が一部認められたことは評価する」と話した。協和発酵キリンは「判決内容を精査し今後の対応を検討する」、東理は「判決を精査しておりコメントは差し控える」としている。
本文章は『日本経済新聞』から転載されたものです。