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モノクロ商標の許容可能な変形について

2023/10/18 国際

モノクロ図形で登録された商標には、どのような使用形態のバリエーションが認められるのだろうか。最近のEUIPO(欧州連合知的財産庁)の決定から「許容可能な変形の原則(law of authorised variations)」についてマリアンヌ・ティソが説明する。
 

「使用」していない商標は不使用を理由とする取消請求に脆弱だが、使用の形態も登録商標に忠実でなければならない。一方、商標の特徴的な性質、つまり本質的な識別力に影響のない要素は異なっていてもかまわない。実務上は、登録商標と比較して変更された形態での使用を認める許容範囲はあるものの、変更された商標が登録商標と同一性を損なわないと認められることが重要である。この理論は「許容されるバリエーションの法則」と呼ばれる。

 

登録商標のコントラストや色の反転は使用と認められるか?
欧州知的財産庁(EUIPO)の審判部は、2023310日の決定で、黒地に白の2つのシェブロン柄(下図左)は、白地に黒の2つのシェブロン柄からなる登録済み図形商標(下図右)の使用にあたることを確認した。

 

事実関係
 デンマークのスポーツブランド、ヒュンメル(Hummel Holding A/S)は、2006年に第3類、第18類、第25類、第28類、および第35類の様々な商品・サービスを指定してEUに登録した上図右の図形商標(国際登録第915962号)の権利者である。


バリー・ブートキャンプ(Barry’s Bootcamp Holdings, LLC)は、指定されたすべての商品・サービスに対してこの商標が使用されていないという理由で、EUIPOに商標の不使用取消を請求した。


EUIPO取消部は、ヒュンメルが商標の使用を明確に立証しているとして、取消請求の一部を棄却した。証拠には、以下の写真に示す通りの白地(登録通りの使用)と黒地(登録とは異なる使用)の商標の使用が含まれている。

 

バリー・ブートキャンプはこの決定を不服とし、証拠の多くが商標を反転した形(黒地に白)で表現されていると主張した。商標の識別力が低いことから、このような利用の違いは登録商標の識別力を変更する可能性が高く、したがって無効となると主張した。


特にバリー・ブートキャンプは、EU一般裁判所による2019年のアディダスの「三本線商標」に関する判決を引用した。この判決では、アディダスが商標(白地に黒で登録、下写真左)を、色を反転(下写真右)して使用したことは、その識別力に影響を与える重要な変更とされた。

 

アディダス事件で、当該商標は「極めて単純」であるとされ、比較的「少ない特徴」しか持たず、白地に3本の平行な黒線が長方形に配置されているだけで、「問題となった商標が極めて単純であることを考慮すると、わずかな違いであっても、登録された商標の特徴に重大な変化をもたらす可能性がある。
また、アディダス判決で、絶対的な無効理由と使用によって獲得された識別力について検討されたことに留意すべきである。登録商標と使用商標の著しい差異についても指摘している。

 

一方、バリー・ブートキャンプ ヒュンメル 事件では、審判部は以下のような異なる見解を示した;
商標は登録時に独自性(sui generis)を有している
シェブロン柄は基本的な幾何図形ではなく、複数の方法で表現できるという点で、「極めて単純」とは言えない

 

審判部は、色の反転が商標の識別力に影響しない理由について、使用商標が登録商標の形状、輪郭、比率を保持しているからで、使用されている商標のバリエーションは、登録商標との同一性を損なわないと認められると明確にした。

 

審判部は審決で、20144月に発行された「モノクロ商標の保護範囲に関する共通実務(Common Practice)の共通文書(Common Communication)」を引用している。この共通文書は、以下の条件であれば、色を1回変えただけでモノクロ商標の識別力が変わることはないと規定している;

文字/図形の要素が一致しており、これらが識別力のある主要な部分である場合
色のコントラストが重要である場合
色彩又は色彩の組み合わせが、それ自体では識別性を有していない場合
色彩が商標の全体的な識別力に主要な影響を与える要因の一つではない

 

今回の事件では、すべての基準が順守されており、特に、公衆が当該商標と明確に認識できるコントラストであるため、色を反転させた商標の使用証明は、登録されたモノクロ商標の有効な使用証明になると結論づけることができる。

 

引用された判例

審決は、登録商標とは異なる形態の商標の使用は登録商標の識別力を変更するものではないとされた過去の多くの判例に依拠した;また、ヒュンメルに関する202011月の審決も引用されたが、この審決では、黒(下写真右)の登録商標とは異なる、あらゆる色のシェブロン柄(下写真左)の図形要素を表す使用証拠が審判で認められた。

 

キーポイント

本審決から、登録とは異なる形態での商標使用に関する判例法について、新たな有益な事例を得ることができる。

 

商標権者には一定の許容範囲が認められており、登録商標は使用する商品・サービスのマーケティングおよびプロモーションの要件に適合させることができるが、商標はそのDNAを保持しなければならず、バリエーションはその特徴的な性質を変更してはならないという事実に変わりはない。

 

本文章は『TMfesta』から転載されたものです。

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