「キユーピーが兵器に商標出願」騒動の真相
2015/05/01 国際防護標章登録されているキユーピーのロゴマーク
食品会社大手の「キユーピー」が2月、同社のロゴである“キューピー”の人形イラストを、兵器などの区分である第13類に商標出願したと、インターネット上で伝えられた。愛らしいキューピー人形のイメージとはかけ離れた区分への出願に、さまざまな臆測が飛び交い、短文投稿サイト「ツイッター」への投稿が相次いだほか、同社の公式ツイッターを名乗る者まで出現した。しかし、その実態は、兵器の開発でなく、会社の「顔」を守る企業の戦いがあった。
4月から音や色彩なども対象に
商標とは、事業者が自社の取り扱う商品・サービスを他社のものと区別するために使用するマーク(識別標識)のことで、文字▽図形▽記号▽立体的形状-や、これらを組み合わせたものをいう。また、4月1日からは、音▽色彩▽位置▽動き▽ホログラム-も商標登録の対象になった。
特許庁に出願して商標登録を受けることができれば、そのマークの「商標権」を取得することができる。商標権を有している者以外は原則、そのマークが使用できなくなるため、他社が無断で使用した場合には使用差し止めができるほか、イメージ低下などで生じた損害の賠償請求ができる。
商標権の存続期間は登録日から10年だが、更新申請をすれば、何度も更新することができる。
区分は第1~45類まであり、食品分野は第29~33類に該当する。第13類は、銃砲、銃砲弾、火薬、爆薬、火工品およびその補助器具、戦車といった商品における商標を対象にしている。
なりすましツイッター「マヨネーズ砲」否定
キユーピーの商標出願が取り上げられたのは2月23日。出願公開制度に基づき公開された商標出願がネット上に取り上げられたとみられる。
同社の公式ツイッターを名乗る者が同日、「区分13での商標出願につきましては、このような区分の製品にキューピーのイラストが使われないようにするための守備固めでございます。決してマヨネーズ砲とか、そういうものの視点ではないです(笑) キユーピー株式会社(公式) (@Kewpie_news)」と投稿。一部で、キユーピーの公式見解と誤認されたケースもあった。
キユーピー広報部は「商標登録をしたことは間違いありませんが、公式ツイッターはありません」と回答。使用しない区分への出願については、「キユーピー人形やキユーピーの文言が下手に使用され、当社のブランドが傷つくのを防ぐ意味で登録しました」と説明する。
実際、同社は今年、更新時期を迎えた複数件を出願しており、第13類もその中の一つだった。広報部の担当者は、「第13類の部分だけがクローズアップされて報道されるのは避けたい状況です」と困惑する。
ブランドイメージを守る「正統な手段」
商標登録の中でも著名な商標に関しては、防護標章登録が認められている。防護標章制度は、使用しない区分にも登録することができ、他分野であっても他社から使用されることを防ぐことができる。
キユーピーが第13類に登録したのもこの防護標章に当たり、キユーピーのロゴマークが兵器類などに使用されないように先手を打った形だ。
特許情報提供サービス「特許情報プラットフォーム」によると、キユーピーは昭和56年から防護標章登録を行っており、徐々に範囲を広げ、13類のほかにも被服や建築関係など多岐にわたる分野で登録している。
特許庁によると、平成25年の商標登録の出願件数は11万7千件で、そのうち45件が防護標章出願だったという。24年は11万9千件のうち52件、23年は10万8千件のうち54件、22年は11万3千件のうち59件が防護標章出願だった。
特許情報プラットフォームで検索すると、ヤマトホールディングスの「クロネコ」▽森永製菓チョコボールの「キョロちゃん」-なども防護標章として登録されている。サンリオの「ハローキティー」は、キユーピー同様、第13類にも登録している。
弁理士の大谷寛さんは、「防護標章は周知・著名なブランドのイメージに傷がつくのを守る、制度で認められた正統な手段。キユーピーのロゴマークのイメージを守ろうとする、キユーピーのブランドイメージ戦略の一環だろう」と話した。
本文章は『産経ニュースWEB-SITE』から転載されたものです。