米国の追加経済刺激策に違法ストリーミングを「重罪」にする法案
2020/12/23 国際米国時間12月21日に米議会が承認した新型コロナウイルス流行に対する追加経済刺激策について、TechCrunchではすでにいくつか記事を掲載してきた。その中には、ブロードバンドアクセスを増やすための資金や、新エネルギーへの取り組みのための資金(未訳記事)も含まれる。
だが、テクノロジーやメディアの世界に深刻な影響を及ぼす可能性のある項目が他にもある。その1つが、利益目的の違法なストリーミングを懲役10年以下の重罪(The Hollywoodr Reporter記事)とする(軽犯罪ではなく)という、Thom Tillis(トム・ティリス)上院議員(ノースカロライナ州選出の共和党員) からの提案を含む法案だ。
ティリス議員が2020年12月初めにこの提案の草稿を発表したとき、インターネットのオープン標準 / 知的財産に関与する非営利団体Public Knowledge(パブリック・ナレッジ)は声明を発表し、「著作権侵害のための更なる刑事罰」の必要性はないと主張したものの、この法案は「狭く仕立てられており、ユーザーを犯罪化することは避けている」、そして「無認可の作品をストリーミングに含む可能性があるストリーマーを犯罪化しない」ともいっている。そうではなく、その目的は商業的利益のために海賊行為を行う人々を対象としている。
そしてもう1つは、CASE法(少額賠償における著作権代替執行法)案だ。これは米国著作権局内に新たな著作権主張委員会を設け、少額裁判所に代わって著作権の請求を裁き、最高3万ドル(約310万円)までの支払いを命じることができるようにするというものだ。
2019年、米国下院でこのCASE法が議論されていた(The Verge記事)際、賛成派は独立系アーティストが著作権侵害の申し立てを簡単に行えるようになると擁護したが、一方でアメリカ自由人権協会や電子フロンティア財団などの団体は、個人のインターネットユーザーに悪影響を与える可能性があると述べている。
Techdirt(テックダート)のMike Masnick(マイク・マスニック)氏は米国時間12月21日、この法律は「トロール(荒し行為)を減らすために法律を修正する必要があるときに、まさに著作権トロール(金儲けを目当てに著作権侵害の疑いを探し回る人々)を急増させる」と主張した(Techdirt記事)。
下院と上院が承認した現在、この法案はドナルド・トランプ大統領の署名に向けて送られようとしている。全文は米国時間12月21日に発表されたばかりなので、今後数週間から数カ月の間に、その影響について多くの議論が交わされることを期待したい。
※本文章は『TechCrunch Japan』から転載されたものです。