どっちが元祖? 中国で横行する韓国ブランド商標先取り
2017/03/03 中国
韓国発でフランチャイズ(FC)展開するデザートカフェ「ソルビン(雪氷)」のマーケティング担当者は先月末、市場調査のために中国・広州市を訪れたところ、信じられない光景を目にした。本社直営の「ソルビン」の店舗からわずか100メートルあまり離れた通りに偽物の「ソルビン」がオープンし、多くの客でにぎわっていたからだ。ハングルで書かれた看板やメニューだけでなく、店員の制服まで韓国国内と瓜二つで、普通の消費者ならだまされてしまうほどだった。ソルビン関係者は「店長に抗議したら、むしろ『ウチが元祖だ』と言い返された」という。実際に偽物は本家よりも先に「ソルビン」という名称で中国で商標登録してしていたため、提訴することもできなかった。
中国の無差別な韓国商標先取りで、中国に進出する韓国企業の被害がどんどん広がっている。中国企業やブローカーが韓国の有名ブランドを中国で先行して商標登録し、それを高値で韓国企業に売りつけたり、偽物のサービスを量産したりとやりたい放題だ。韓国企業は中国に進出しようとしても足止めを食い、まずブローカー相手に商標登録の無効訴訟を起こしたり、商標の譲渡交渉を行ったりするのに時間を費やさなければならない。
■せっかく育てたブランドなのに
韓国特許庁によると、韓国企業を狙った中国の商標ブローカーは40社以上に達する。これら業者による被害を受けた韓国企業は昨年だけで1125社に上り、中国国内での商標権を奪われ、営業ができない上、商標使用料も受け取れず、損失は毎年拡大の一途だ。売上損失を含む総被害額は年間2000億-3000億ウォン(200億-300億円)に達すると推定される。商標を取り戻すため、ブローカーに巨額を支払うこともある。2012年にアップルは「iPad」の商標を先行登録した中国企業に6000万ドルを支払った。
豚焼肉チェーン「クイガ」の上海店には昨年初め、「商標権を侵害しているので、営業を中止しろ」という突然の警告書が届いた。中国人がハングルの「クイガ」という商標を先行登録していたからだ。クイガは泣く泣く3000万ウォンをかけ、中国国内の3店舗で従業員の制服と看板を一部が漢字の「クイ家」に変更し、営業せざるを得なかった。
フライドチキンのFCである「チルチル」「ホシギトゥマリチキン」などは、2014年に韓流ドラマ「星からきたあなた」でチキンをつまみにビールを飲む「チメク」がブームを巻き起こして以降、中国のブローカーによる商標先行登録のターゲットになった。両ブランドは偽ブランドに対する訴訟を準備中だ。
14年に中国に進出したソルビンは、現在28店舗を展開しているが、偽のソルビンはその10倍の300店舗を超える。偽のソルビンは看板にハングルで「ソルビン」と表記し、そのそばに小さく漢字でも「雪氷」(本家は「雪」1文字)と表記をすることで不法盗用論争を避けている。ソルビン関係者は「苦労して韓流ブランドに育てたのに、無関係のブローカーがカネを稼いでいる。中国をはじめとする世界市場進出計画に大きな支障が生じた」と話した。
アクセサリー販売業、ジュエル・カウンティーのチョ・アラ代表は「韓国で少しでも人気が出ると、中国のブローカーがすぐに商標登録してしまう。昨年には香港に住むブローカーがうちの商標を先行登録し、2000万ウォンを要求してきた」と話した。チュヨン国際特許法律事務所のキム・スジン弁理士は「規模が小さい中小企業や零細業者は商標の先取り行為にまともに法的な対応が取れずにいる」と指摘した。
■「商標ブローカーは不法」の論法は通用するか
個人単位で動いてきたブローカーは最近、法人に成長し、組織的に商標の先行登録を行っている。国内外の韓国企業の見本市を見て回り、ターゲットとなる業者の情報を収集することもある。韓国企業の商標303個を先行登録した朝鮮族ブローカーは「ソルビン」など多くの韓国企業と争ったが、一度も敗訴していないという。
幸い中国政府は最近、韓国、米国などの抗議が強まったことを受け、商標ブローカーに厳しく対処することを約束した。これまで中国では商標の先行登録を防ぐ根拠を欠いていたが、3月1日からは「使用意思がない商標の先行登録行為を違法と見なす」という新たな審査基準が導入された。
しかし、新基準も明確とは言えない上、実際にブローカーの商標先取りを不法と立証するのは容易ではないのが実情だ。円光大韓中関係研究院のユン・ソンヘ教授は「韓国企業がまず中国で商標登録を行い、商標権を防衛することが最善だ。政府は企業に商標先取りに関する情報を迅速に提供し、訴訟支援に取り組む必要がある」と指摘した。
崔仁準(チェ・インジュン)記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
本文章は『朝鮮日報』から転載されたものです。