Netflixと米国政府が、スペース・フォース(宇宙軍)を巡って法廷で争うかもしれない理由とは?
2020/06/10 国際「スペース・フォース」(Space Force)という名前は、トランプ大統領が新たに発足させた宇宙軍と、それを風刺したスティーヴ・カレル主演のNetflixコメディの両方に使われている。だが最終的に、商品化の目的で「スペース・フォース」を世界的に商標登録することができるのは一つの団体――Netflixか米国政府のどちらかだけだ。これはつまり、Netflixが米国政府と法廷で対決する可能性があることを示唆している。
Netflixは米国憲法修正第1条にある言論の自由により、スペース・フォースに関する番組を製作する権利が保障されている。そしてNetflixは米国政府よりも、ヨーロッパやメキシコを含む国際的な領域にわたり、「スペース・フォース」の商標権を獲得することにはるかに積極的なようだ。
The Hollywood Reporter(以下THR)によると、対するアメリカ空軍は商標を使用する意図で、米国内の登録申請が保留になっているだけだという。その点において、連邦政府は権利を主張していることにはなるが、これまでに確認された商標権がないことも意味する。2007年に国防総省は商標とブランディング・オフィスを設立し、米国空軍は「娯楽用」の知的財産のライセンスに特化したウェブサイトを持っている。
商標は、誰がどの製品を販売しているかを明らかにするものだ。今回の場合、「スペース・フォース」印の商品を購入する際、米軍に関連する商品を購入しているのか、それともテレビ番組に関する商品を購入しているのか、消費者を混乱させる可能性がある。
米国以外の地域では、Netflixにしろ米国政府にしろ、「スペース・フォース」の商標を最初に登録した方が権利を獲得することになる。
THRの説明によると、米国における優先権は、誰が最初に米国特許商標局に登録するかではなく、実際の商取引での使用に基づく「先制使用」と呼ばれる商標登録システムが適用されている。だが他の多くの国では、最初に登録した方が優先される「先制登録」に基づいている。
記録によると早くもNetflixは、2019年1月に世界中で「スペース・フォース」の商標権の申請を提出していた。つまり米国防総省は寝首をかかれてしまったのだ。
では米国政府は、実際にスペース・フォースの商標を巡って訴訟を起こすのだろうか? 風刺を承認した言論の自由による保護を考えると、Netflixの『スペース・フォース』に権利が認められていることは明らかで、米国の法廷で連邦政府は大きな壁に直面することになるだろう。
では、米国以外ではどうだろうか? それは別の話だ。THRが指摘しているように、米国以外の多くの国では、米国で通用する保護やフェアユース(米国の著作権法第107条において規定されている、著作権のある商品に対する排他的権利の制限に関する条項)の基準を提供していないからだ。
だが、スペース・フォース(宇宙軍)が内在する米空軍は、現時点ではNetflixに対して訴訟を起こす意思はないようだ。空軍の代理人はTHRに、スペース・フォースをめぐる連邦政府とNetflix間による商標の争いについては、知らされていないと述べていたとのこと。
「我々はNetflixと番組のプロデューサーが、我が国の軍に誕生した最新の軍部を最高にクリエイティブな形で描いていることを願います」とコメントしていたそうだ。
※本文章は『IGN Japan』から転載されたものです。