米Tesla、電動自動車普及のため特許無償公開
2014/06/13 国際電気自動車(EV)「モデルS」を製造する米テスラ・モーターズのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は12日の電話会議で、同社の特許を「オープンソース」化し、無料で利用可能にすることを明らかにした。電気自動車の採用拡大を目指す。
マスクCEOはテスラが申請した「数百件」の特許へのアクセスを可能にし、「善意」の特許使用者を提訴しない方針も示した。今月3日の年次株主総会では、「本格的なEVを提供する自動車メーカーが少な過ぎる」として何らかの対応を取ると表明していた。
同CEOは現在の特許制度について、技術の進歩を妨げる恐れがあり改革が必要だと指摘。今回の決定に「幹部の一部は目を丸くして驚いた」としながらも、テスラに打撃を与えることはないと語った。
米ボードウィン大学(メーン州)のゾリナ・カーン教授(経済学)は「技術は利用する人が増えるほど、市場での価値が増す」と指摘する。
米国特許商標庁によると、テスラは、電池パックが過充電になることを防ぐシステムや電気モーターの改良型ローター構造など、160件を超える特許を取得している。
テスラはこれまで、出資者のトヨタ自動車や独ダイムラーに電池パックやモーターを供給してきた。だが、今回の動きは、同社が世界の自動車業界に対しよりオープンな関係を築くことを目指すマスクCEOの方向性を示している。
同CEOは今週、独BMWの幹部と会談し、EVを急速に充電するテスラの「スーパーチャージャー」システムの利用提携やBMW独自の電池工場の建設を勧めた。
BMWの広報担当者、ケン・スパークス氏は、今回の会談はEV開発の強化についての協議だったと述べた。
マスクCEOの戦略はハイテク業界では珍しいことではなく、IBMは同様の手法を9年前に実施した。だが、自動車業界では異例の動きだ。米ミシガン大学ロス・スクール・オブ・ビジネスのエリック・ゴードン教授は「自動車会社は自社の知的財産はしっかり鍵をかけてしまいこみ、他社のものは奪うのが伝統だ」と指摘する。
自動車メーカーはこれまでテスラを門外漢扱いしてきた。だが、ゴードン教授は、こうした企業がテスラの今回の提案を受け入れるかもしれないと予測。「彼らは自社プロジェクトの開発を加速させるものは何でも利用するだろうし、そうすべきだ。『自前主義』は意味をなさない。すでに、多くの新しい工夫を外部、自社のサプライヤーから獲得してきたのだから」と述べた。
本文章は『http://www.sankeibiz.jp』から転載されたものです。