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引例商標が高い識別性を有する場合に区分をまたがって類似性を認めた事例

2024/01/15 中国

【事案概要】

北京路浩のクライアントである SCHALLTECHNIK DR.-ING.SCHOEPS GMBH 社(以下「異議申立人」)は、世界に誇るドイツの老舗マイクロフォンメーカーであり、最高級のイベント用音声収録デバイスを生産している。

 

SCHOEPS」は異議申立人のオリジナルブランドである同時に、企業の商号でもあり、高い識別性とオリジナリティを有する。1962 年に、異議申立人は商標国際分類第 9 区分に「SCHOEPS」(本件引例商標)と図形商標の国際出願を行い、中国も指定した。指定商品は、「音声送信装置、マイクロフォン、マイクロフォンスイッチ、集音器」などとなる。

 

異議申立人はウォッチングなどの手段で、北京盛世音盟電子科技有限公司(以下「被異議人」)が、2019年-2023 年の間に、第 9 区分に指定商品を「通話機、マイクロフォン、通信デバイス用マイクロフォン」とし、第 35 区分に指定役務を「広告、ネットワーク上のオンライン広告」とし、類似商標を複数登録出願したことが発覚した。例えば、「SCHOEPS」(第 60933380 号)、「SHOEPUS」(第 35777614 号)、「SOHOEPSMIKROFONE」(第 37291640 号)などである。

 

異議申立人の法的利益を守るため、北京路浩は 2022 4 月に、第 35 区分の「SCHOEPS」(第 60933380号)と第 9 区分の「SHOEPUS」(第 35777614 号)に対し、異議申立請求と無効宣告請求を提起した。その後の 2022 12 月に、その他の 7 件の類似商標に無効宣告請求を提起した。

 

【北京路浩の主張】

現行の類似商品と役務分類表に厳格に従えば、被異議商標の第 35 区分の「SCHOEPS」と本件引例商標は、その指定の商品・役務からして、類似商品・役務上の類似商標に該当しないが、その指定商品の機能・用途・生産部門・販売ルート・対象消費者などの複数の側面で同一するかまたは緊密に関係するため、類似商品と認定されるべきである。

 

調査によれば、被異議人は、当時計 36 個の商標を有し、その内の複数のものは、他社の先行の知名度の高いマイクロフォン・音響のブランド(その内の多くはドイツのメーカーである)を模倣するまたはパクリの疑いがあった。しかも、被異議人の公式サイトには、異議申立人のブランドの「SCHOEPS」の製品の真正品を販売する情報も確認された。これらの証拠に基づき、北京路浩は、第 35 区分の「SCHOEPS」(第 60933380 号)と第 9 区分の「SHOEPUS」(第 35777614 号)を含む複数商標は、不正な手段で登録したものであると主張した。

 

【決定の結果】

国家知識産権局による決定の結果として、被異議商標は、商標法第三十条に反することで、その登録は認めないとされた。その理由は以下の通りである。

 

被異議商標の第 35 区分の「SCHOEPS」と本件引例商標は、その指定の商品・役務が異なる。しかし、異議申立人側が提供した証拠によると、被異議人は「SCHOEPS」や図形と高度に類似する商標を複数出願した以外に、他社の先行商標と同一するかまたは類似する商標も多く登録出願した。被異議人は、これらの商標のデザインの出自と商標の使用意図に関して、合理的な説明をなんら提供できなかった。

 

諸事実と照らせ合わせると、国家知識産権局は、被異議人が明らかに他人の商標をパクる又は故意に模倣する意図を持っていると判断した。かかる行為は、関係公衆が商品・役務の提供者に誤認させる上、通常の商標登録出願の秩序を乱れ、公平な市場競争の環境にも害しているため、商標法第三十条と第三十五条に対する違反となり、その登録は認められるものではない。

 

【本案の意義】

商標に対する異議申立などにおいては、商品・役務の類似性の判断は、原則上、類似商品と役務分類表を根拠とする。本事案の場合、被異議商標と引例商標の指定の商品・役務が異なるが、被異議商標と引例商標のアルファベットの構成と全体的な外見は完全に一致する。引例商標が高い識別性を有する場合、被異議人が所有する商標の内、引例商標と同一するまたは高度に類似する商標が複数存在することから、被異議人が明らかに他人の商標をパクる又は故意に模倣する意図を持っていると判断した。区分をまたがって類似性を認めることで、参考価値はあると言えよう。

 

本文章は『TMfesta』から転載されたものです。

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